サブローと高畠コーチのフィールド・オブ・ドリームス
※・・・はじめにこちらの記事をお読みください。
「サブローと高畠コーチのフィールド・オブ・ドリームス」
雨上がりの晴れ間、一時的に人工芝から水蒸気がわいている、とある練習時。サブローがいつものように反時計周りにホームベース付近からグランドの端に沿ってゆっくりとジョグでウォーミングアップをしていた。レフトファールゾーン付近に差し掛かったあたりで、霧の中から彼の視界にとある人影が入ってきた。・・・・ユニフォームを着ている。選手?いや、違う。ipodで音楽を聴きながら走っていたサブローは、その人影を見るともなしに見ていたのだが、その人影の持つ、とある特徴に気づいた時、思わず小さな声で「あ」と言った。
「眼」 見覚えがあるどころか忘れようと思っても忘れられない。忘れるはずがない。厳しい叱咤に「やかましーわ」とふてくされ、そのぎょろりとした鋭い眼光から顔をそむけたことも一度や二度ではない。
「頑張ったな!日本一おめでとう」、笑いながらこちらに近付いてきた。そしていっしょになってゆっくりと走る。不思議と気味の悪いものではない。しかし考えてもいない光景にただただ唖然としていると「4番はないよな、4番は」と言ってきた。思わず「プッ」とサブローが吹き出す。
「日本シリーズで楽になれって言ったってムリですよ」「そうか?・・・やっぱり4番はないか?」又サブローが吹き出すところだったが、少しこらえ、ほほえみながら「いや、マリーンズならアリだと思います」と伝えると「そうか」と答えた。
ライトポール付近に近付いてきた。「じゃあな」 人工芝から立ち上る水蒸気を通して、一塁側ベンチ付近で選手たちが各自体を動かしているのが見える。水はけのいいグランドだ。もうじき水蒸気も晴れるだろう。
「何かボクに伝えておくことないですか?」サブローが思わず言った。「いや、ないよ。監督についていくといいと思う」そして、付け加えて言った。「ただ、PLぅ?!って言いながらもう一度くらいオマエにノックしたかったよ」
ファールライン付近も目の前だというとき、人影がおだやかに消えていった。消えるときにおだやかもなにもないだろうが、サブローにはそう感じた。
サブローは一塁側ベンチ前までぐーんとスピードを上げて走った。「おーい、ケガするぞぉー!」ジョニーが叫んだ。「日本一の実感がようやくわいてきたんですよ!」「・・・ワケわかんねーって!」ジョニーが相好を崩した。
サブローは走れる選手だ。まだまだ元気だ。ウォーミングアップの時ではあったが、ライトポール付近から一塁側ベンチ付近という区間を、周りの人間が心配するほどのスピードで走ったとしても怪我などしない。そもそもこの時だって全力では走っていない。それが周りには「すごく速く走っているように」見えるわけだ。
しかし普段はこんなこと絶対にしない。ジョニーが心配したのもムリはない。急に速く走ったのは顔に強い風を当てるためだった。「目的」を果たすには十分なスピードだった。ジョニーはまだ笑ってた。他の選手もいつもどおりウォーミングアップを続けていた。サブローは照れながら2周目に入った。水蒸気も大分晴れてきた。いつもの練習風景がそこにあった。
※・・・・サブローはPL学園出身で、高畠コーチがキャンプ等で「オラーPL!もっとシャキっととれー!」なんてゲキを飛ばすなどという事があったんだそうです。なお、この文章は「我がマリ」の掲示板に載せたものですが、これに加筆修正を加えてあります。
テーマ:千葉ロッテマリーンズ - ジャンル:スポーツ
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